誰でも宝物を持っています。それは自分の宝物であると思えば、誰が何と言おうとそれはその人の宝物なのです。
ある大学の先生から依頼された、七福人の「福禄寿」の修復です。ご本人は福禄寿であるとの見解でしたが、像は帽子をかぶっていること(寿老人は帽子をかぶっているモチーフが多いが、福禄寿はひたいが大きく、帽子をかぶっているモチーフはあまりみないこと)から寿老人の可能性もあります。巻き物をもっていた節があり、巻物を持っているから「福禄寿」であるとも、なかなか言えないかも知れません。「寿老人」を持っているようですし。中国では「福禄寿」と「寿老人」の区別はなかったともいわれています。
いずれにしろ、この像を断定するのは難しいのですが、今回の依頼はその巻物を復活させることであります。
小さきは小さきままに、折れたるは折れたるままに(昇地三郎)
制作はかなり古く、ご家族の遺品の中から見つけたとのこと。折れたるは折れたるままにしても良いという考えもありますが、大切にしたいという気持ちに最大限寄り添えるよう、今回は巻物をこの手に持たせるという修復を行うこととなりました。
写真に写っている巻物が、像に今回持たせる巻物です。