ウッドカービング教室[第75回]-ギルディング(3) バーニッシング,プロテクション-

バーニッシングの説明のところまで来ました。使うツールはバーニッシャーというツールになります。

バーニッシャー

作業を始めるにあたり部屋は、空調で管理されている必要があります。1時間あるいは、それ以上の時間、最初のステップはバーニッシャーでこすることにより、表層部分をクリーンにし、温めることから始まります。その後、バーニッシャーを移動させていきます。移動はとても小さなエリアを非常にやさしくこすり、小さく移動していきます。最初はバーニッシャーの重さだけで擦りながら動かし、少しづつプレッシャーを加えていきます。1分、またはそれ以上この作業を行うと、目に見える艶(ツヤ)が出てきます。もし、この艶が認められない場合、しばらく放置した後もう一度行います。これは「神経質な段階(temperamental stage)」と呼ばれるもので、ご機嫌を取る必要があるのです。決して、無理強いしてはいけません。湿気があるじめじめした日や、マイルドな日はバーニッシュ向きの日とされ、例えば、乾燥した夏の気候よりは良いとされています。しかし、これが正しかったとしても、杓子定規に文字通り解釈しすぎないことです。とにかく、湿っぽい傾向のある場所は、とても乾燥した場所より、バーニッシュの作業を行う場合、向いていると言えるかもしれません。

ボーロのレイヤを形成してから、長い時間をあけてバーニッシュ工程に入らないでいるのは、あまり良い印象はありません。1日、または2日くらいがせいぜいで、それ以上はかけない方が良いでしょう。グランドが固くなってしまい、バーニッシングをやさしく受け止めることができなくなるからです。もし、何らかの理由で実際のバーニッシング作業に3,4週間取り掛かれない場合、次を試してみてください。ハンカチーフを使ってバーニッシングが必要な個所の上に置きます。別のハンカチーフを取り、きれいな水で濡らしできるだけ水を絞りだして、手でねじり、乾燥しているハンカチの上に置きます。1時間、あるいはそれ以下の時間、これは季節にもよりますが、放置すれば石でバーニシングができる状態を保てます。

作業を通して、高く丸まったフォームはバーニッシャーにより、一段と輝くことを発見するでしょう。これはそうなるべくしてそうなります。一番小さなバーニッシャーの石が入らないような小さな箇所を、バーニッシュしようと努力しないことです。このような個所はマット(matt=艶消し)なままに残しておきます。マットな個所とバーニッシュした箇所のコントラストが作品の魅力を強調することになります。事実として、ギルダーは通常様々な違ったフィニッシュ(仕上げ)構想を、作業に取り掛かる前に思い描きます。マット(matt=艶消し)表面を強調するためにとられる通常の戦略は表面を非常に弱いSIZEの層でコートすることです。コップ1杯の水にSIZEスプーン1杯という分量になります。これは表面の色が、ギルディングした表面に過度に見えてしまう場合に、とらなくてはならない戦略でもあります。

金箔が貼り終わったあと、バーニシングに入る前、金箔の貼り方が悪く、赤いスポット(ボーロの層)が見える場合、大部分の場合は、金箔でカバーしますが、これはフォールティング(faulting)と呼ばれます。もっとも早い救済方法は、金箔のかけらをセイブル・ブラシ(sable brush=クロテンのブラシ)で取り出し、SIZEの入った水をつけて補修します。息を強くふきかけ、コットンウールでわずかに押さえる方法がとられます。息を吹きかけることにより、水に触ることなく表面と同化することができるのです。その後、バーニッシュを行います。

プロテクション(保護コート)

多くの場合、バーニッシュを行った作品の表面に、プロテクション(保護層)は必要になりません。しかし、宝石箱の取っ手や、祭壇のキャンドルスティックのように、表面がハンドリングされる場合などはプロテクションが必要になります。粒度の細かいシルバーニス(Silver varnish)、またはセルロース・ラッカーなら注意を引くほど、光沢に影響を及ぼさないで、プロテクトすることができるでしょう。

GILDINGアドヘンシブ

写真は本稿を執筆中に採用したカバー用アドヘンシブ(保護用シーラー接着材)です。塗ったときは白い色をしていますが、乾燥すれば透明になります。乾燥するまで、触ることはできません。保護シーラーとして使用している人もいるようですが、乾燥するまでかなりの時間を要する印象がありますので、扱いは若干難しいと思います。もし、保護シーラーとして欲しい場合は、本稿で書いたとおりラッカー系の方がよろしでしょう。

シリコンラッカー

写真はシリコンラッカースプレーです。このラッカーでも十分強力な保護層を構成することができます。