金箔のハンドリング方法と必要な道具
金箔は薄いので、基本的には手で触ることはできません。手で触れば一遍に壊れてしまいます。
とはいいながら、手でベタベタ触って、アプライ(金箔貼り)している動画などもちょくちょく見かけまし、それが悪いとも思いません。ただ言えることは、金箔は材料が金なので、それなりに高価な材料でありますから、大切に使いたいものだということです。
金箔はエジプトのツタンカーメンの仮面の例を引き合いに出すまでもなく、人間の歴史と同じくらいの歴史がありますから、そのハンドリング方法も多種多様なものがあります。
西洋では金箔を載せるためのトレイのようなクッション(Gilder’s cushion)、金箔を運ぶためのブラシのようなチップ(Gilder’s tip)、金箔を切断したり運んだりするためのナイフ(Gilder’s knife)などの道具が使われます。一方、日本では日本画などで使われている技法で「あかし紙」によるハンドリングという方法があります。どちらの方法を採用しても良いのですが、日本においてこれらの道具を簡単に入手できないという理由から、ここでは「あかし紙」によるハンドリング方法を説明します。
まず必要な道具から見ていきましょう。
金箔(Gold Leaf)
まず金箔ですが、これは普通に買えます。
薄い紙(英語ではtissueと表現されています)に1枚づつ金箔は挟まれています。大きさは8cm×8cmくらいです。日本においては、ほぼ95%以上石川県で生産されているようです。一枚づつあかし紙にうつして金箔を移動させて作業します。英語ではGold Leafと呼びます。何枚かセットになっている状態を英語ではBOOKと呼びます。海外の場合は25setが1BOOKという構成になります。
あかし紙
正確には「あかうつし紙」というようです。この紙には表と裏があり、つるつるの蝋が塗ってある側を使い金箔を吸いつけて運びます。金箔より一回り大きいサイズになります。日本画や、屏風や、ふすまなどに金箔を押すときに使いますが、日本ユニークな道具のようです。
メノウ棒(Burnisher)
英語ではバーニッシャー(Burnisher)と呼ばれます。メノウ石という石(stone)がハンドルの先端についています。この石を使い金箔をバーニッシュ(艶出し)します。(本稿では石で擦るという表現をしています)。表面は金箔を引っ張ったり、傷つけたりしないために、高度に研磨されていなければなりません。写真は先端がくの字に曲がっているものですが、先端が平たいもの、および先端が尖ったものなど、さまざまなサイズと種類があります。本稿のギルディングに関しては、写真の「く」の字のものが一番良いと思われます。木のハンドル製のものがもっとも使いやすいと思われており、中には金属製のハンドルのものもあるようですが、何時間もバーニッシングしていると使い心地は快適ではなくなるそうです。多くの仕事において、2本もあれば十分と言われています。宝石、指輪などのバーニッシュにも使えるようです。
筆(Brushs)
基本的には何でも構いませんが、説明にあるように豚毛とラクダ毛があるとベストのセットになります。
モップ(Gilder’s mops)
ブラシの一種ですが、筆でグランドワーク(ジェッソワーク)を行うのに対して、金箔に対して行う作業用ブラシをモップと呼びます。(ただし、この辺の呼称は厳密なものではないようで、いろいろ変わるようです)
ラクダ毛のものが良いようです。柔らかい毛でなくてはなりません。金箔を水に置いた直後に金箔のhome(金箔本体)を押すときに使います。
静電気防止ピンセットと竹箸
金箔押しで一番の大敵は静電気です。上側の白いピンセットは静電気が起きないよう、プラスチックでできているピンセットです。もう一本下側の箸は、素手はもちろん、普通の箸ではなかなか取り扱いの難しい金箔を、綺麗につまむことのできる「金箔専用」の竹箸です。約20センチのミディアムサイズを使っています。これはあかし紙を使って金箔をはがすときに使用します。あかし紙とこの竹箸はセットで必須アイテムになるでしょう。
ベビーパウダー
どこのものでも構いません。金箔を扱うときに発生する静電気を除去するために、手やはさみ、ピンセットなどにつけます。
ギルディング(Gilding=箔押し)
さて、準備は整いました。ギルディングを始めましょう。準備された水にモップ(Gilder’s mop)をつけて、貼りたいところの大きさに切った金箔で、貼りたい箇所を十分に濡らします。そうしたら、「あかし紙」で金箔を吸着させ、慎重に貼りたい箇所の上まで持っていきます。次に金箔を徐々に濡れている箇所に近づけると、金箔は濡れている表面の方に吸着されます。
上の写真はあかし紙で金箔を移動しているところの写真です。(実物をみないとわからないかも)
金箔を貼る最初の努力は、元気づけるものにはならないでしょう。金箔を貼る手順は見たところ難しいように映るかもしれません。しかし、練習することで、完璧に近づいていけます。ギルダーが1日で貼ることができる金箔のブック数は驚くべき数に上ります。次の助言は品質が良く、かつスピーディな金箔貼りの助けになることでしょう。働いている間は窓も扉も締めたままにします。これにより金箔が動くのを防ぐことができます。金箔は経済的に切って使うべきです。例えば、モデリングによって使う量を調整しましょう。多くの場合、大きい方が良いケースが多いですが。練習を積み重ねると、金箔の破片を、必要なところに置くことはさほど難しいことではないことに気が付くでしょう。
金箔がブリッジになるようなフォーミングは避けるべきで、おのおののモデルで金箔をラップするようなフォーミングの方が好ましいです。十分濡れていないと、金箔はうまくつかないこともわかることでしょう。一方、濡れすぎている表面は金を黄色に着色してしまい、これはバーニッシュをできなくさせます。金箔片がうまくつなぎ合わさるようにして、すでに置いた良くできたレイヤのSIZEの水に触れないようにしてください。オーバーラップがある場合、息をふきかけ素早く動かします。