ウッドカービング教室[第69回]-シンプルなチップカービング-

 チップカービングはチゼルとガウジ、または1,2本のチップカービングナイフで加工することができます。

 プロの彫刻家の場合、チップカービングがいつも(仕事として)来るとは限りませんが、多くの場合前者、すなわちチゼルとガウジを好む傾向があります。

 チップカービングの代表的形状は、逆ダイヤモンド型の一連のポケットか、ヘコミで表現されます。カットの原理はどのケースにおいてもほぼ同じです。

 ツールは右肩上がりのツールか、わずかに傾斜が付いたツールのどちらを必要に応じて選択し、下方向のカット(スタブカットといいます)が最初に行われます。

 カットするエッジ角度は、両側から加工するカットが一番深いところでミートするように調整します。三角形のエッジは浅い部分を超えてカットされないように、深いところから浅いところへ、徐々に消えるように加工します。

 例は以下に示します。
 一連の三角形のポケットが加工されています。

 すべての線で下方向のスタブがなされていますね。

 チゼルはその切削の角が、必要とするスロープポケットのラインの内側になるように固定します。

 エンピツのライン幅(0.5mmのシャーペンを使った場合ライン幅は0.5mmです)を切削の基準面限界線として、細心の注意を払わなければなりません。つまり、0.5mmの幅があったとして、0.5mmのどの位置を切削しても良いというわけではありません。エンピツのラインのエッジを基準にしなければならないということです。当然、ラインはエッジ基準で作業した場合、違和感が生じないよう正確に書かれなければなりません。

 チゼル(平ノミ)を横からわずかな角度保持してカットします。
 下図を参考にしてください。

 すべての木屑チップは、引きちぎることなく、きれいに取り除かれなくてはなりません。作業が1回の動作で完結するよう、努力することには意味がありますので目標をもって取り組みましょう。

 作業は、木目の方向について注意する必要があります。これは、他のカービング作業と同様です。とはいえ、デザイン上、どうしても木目に逆らって作業しなくてはならない場合もあります。そのような場合でも、刃の入れる角度を変えたり、刃の動きを変えたりすることで、どのような木目の場合でも、加工が可能になるように練習することが必要です。

 どうしてもできない場合は、エッジの手前で作業が終わるように作業を分割し、ラインを挟んで作業を行うという方法もあります。作業を分割するので、1回で終わるわけではないのですが、ノービスの頃だけでなくかなり上達したあとでも、切削を正確に行うという目標を満たすためには、かなり有効な方法です。

 ポケットが逆ピラミッド形の場合、すなわち、中央が一番深い形状になっているとき、中央ラインのカットを最初に行う必要があります。

 これらは、共通のセンターから各角にまで谷が続きます。

これの例を以下に示します。

 ABCで示された三角形があったとします。

 この場合、中央ラインのAO, BO, COが最初にスタブされます。

 チゼルはそれぞれの角(ABC)からOまでのスロープを作るように、斜めにスタブしてください。

それぞれの面はBOA, BOC, COAの面で傾斜させた加工を施します。
 もし線が直線ではなく、曲線である場合は、チゼルではなくガウジを使います。

 単純さを避けるためにチップカービングのデザインには考慮すべきポイントがあります。

 それにはさまざまな方法がありますが、その中に、よく使うデザインパートの使用頻度に限度を設け、平ノミ、あるいはナイフで触っていないエリアを残すという方法があります。削らないことで、削ったところの造形をより明確に表現するのです。チップカービングは、当然のことながら、削ったところと削らないところがあるわけです。削らないところを意図的に残すこと。そうすることで、削ったところの主張を際立たせること。削らないところも、削ったところと同じくらい重要なパートであるということ。このことを意識してデザインに取り組んでみてください。

 たとえば、下図において、全体がポケットにで覆われたものより、カービングされてないパートがある方が、印象に残ることがわかるはずです。

 他の方法は真ん中のデザイン、例えば円、四角、三角、または何で初めても良いのですが、これらのパターンと残りのパターンをこれに主従関係を持たせるという物です。

 2重円のデザインで内側が三角形だったら、外側を6角形にするとか変化を持たせるという意味です。

 また、別の方法はポケットのサイズをさまざまなサイズにするということです。

 小さなポケットを大きなポケットのコントラストをつけると、全面同じ大きさのポケットで加工したものより、格段に見る人に魅力的に映ります。

 これらの工夫を考慮したデザインの例を以下に示します。

デザインはコンパスと定規があれば、簡単に描くことができます。

 参考のため、例ではコンパスや定規で描いた補助線は消さないで残してあります。