紋章”Heraldry”
紋章学を学び描くことは、彫刻に新たな興味と喜びをもたらします。
紋章を作成することは、色に対するチャレンジと、ジェッソとギルディングに対する新しい見識と練習を必要とします。
他の章で説明する紋章の原則は、すべてのクラフトマンが学ぶべき基礎的な課題について述べていますが、特に木彫のクラフトマンにとっては、紋章はアートであると同時に、科学でもあります。
紋章学の分類と、用語体系は13世紀にはすべて完成していました。
それらは、難しいものではありませんでした。
すべての紋章は名前を有していましたが、その名前の数は膨大な数に上ります。
すべては、テキストブックのスケッチで項目毎に記録されています。
使える色は赤、青、緑、黒、紫の5色に制限されていました。さらに、紋章を装飾する金属系の色として、金色とシルバーが使われました。
紋章の作品が良いものか、そうでないものかは、クラフトマンが材料として選んだ素材に対する解釈に大きく依存します。
我々の場合はそれが木になります。
ここでも良いデザインと、その描画の良さは基本的に必要です。
紋章を作るために、クラフトマンに与えられる権限は多種にわたりますが、本のルールに書かれているとおりである必要があります。
それでは、練習に移りましょう。
コートの腕につける紋章を描いてみましょう。
色は何でも構いません。
すべてを描きますが、植物の形を彫刻するために描いたときと同じ要領で、自分で木でこれを彫刻する前提で描いてください。そうすることによって、この作業の目的と興味を持続させることができるでしょう。
(a)盾とヘルメット、ヘルメットのてっぺんのとさかまでの割合はオリジナルデザインの基準となるものです。
(b)盾の形はひとつですが、形については割合が、目的に合っている限り、そして使用する素材を考慮に入れてある限り、作者が自由に創造することが許されます。
(c)全体は色付けされます。
盾の紋章はわずかにリーフカービング(凹彫)されます。それらの外形はボールド(太く)で描きます。外形はシンプルにし、形いっぱいに描きます。
多少誇張されすぎていても、またはシンプルすぎると感じられても構いません。
(d)外装からヘルメット、とさかの装飾の大部分は、素材の全厚みを使って彫刻します。
よくできたサンプルを見ると、言っていることの意味がある程度わかると思います。
本章での説明を読み、この練習で得た経験を使えば、あだ名や仕事、あるいは商売など、あるいはそれらのコンビネーションのオリジナル紋章を作ることができます。
これらは、判じ絵(rebus)と紋章の言葉で言われます。
13世紀のはじめには、そして現代においても紋章を作る際のベースとなります。聖職や、非聖職の仕事のどちらにも、これらのサンプルは数えきれないほど存在します。そして、それらは、デザインをしたり紋章を描く動機になりえます。