カービングツール(Carving Tool)は海外で使われている木彫用彫刻刀のことで、非常に多くの種類が存在します。
ストレートガウジ-Henry Taylor
実際に数えた人がいるとは思えませんが、一般にその種類は、1000種類以上あると言われています。
これらのツールは、日本以外の世界中で手に入れることができるので、1000種類以上存在するというのも、納得感があります。
ちょっと待ってくださいよ、今、日本以外の世界中といいました?
そうです。
実は、日本ではこれらのツールは、ほとんど売られていません。
したがって、簡単に手に入れるのは難しい話なのです。これはとても残念な話ですね。
ただし、インターネットが発達した現在、海外から輸入することは以前よりは難しいことではなくなりました。この点は救いです。
ここで疑問に思いませんか?
こんなにツールの種類が多いので、ツールの種類を憶えるのも大変ではないかと。
実は、各ツールにはその形状、種類、使用目的等を基準に「番号」が割り振られています。
この番号付けのルールは、世界各国、世界各国のツールメーカーで、大きな意味で、大してかわりません。小さな番号から大きな番号に移っていくに従い、ツールの刃先の湾曲形状が深くなっていくというルールで統一されています。
イメージとしては、ツールの刃先のR部の形状が、番号が大きくなるの従い次第に深くなっていくのです。
たとえば、1番は一番若い番号ですから、刃先形状は真っ平らです。これは和鑿でいうところの「平鑿(ノミ)」です。
以下はHirsch Carving Toolの#1(Chiselともいいます)の形状です。
具体的に、ツールメーカーの老舗、Henry-Taylerのラインナップを見てみましょう。こんな感じになっています。
#で書かれているのが、番号になります。#3, #5, #7, #9, #11となっており、数が大きくなるほど湾曲の深さが深くなることがわかりますね。
同じ番号でも、1/8インチから1インチまで細かく種類が分かれており、小さいものから大きなものまで、作業する箇所の形状に合わせてツールを選択します。
このような番号による管理は、非常に合理的に思えます。
クラフトマンの間では、ツールは番号で呼び合いますので、5番だとか、3番だとか言えば、大体どのような形状のツールのことを話しているのか、簡単に想像することができるのです。
ツール番号によるメージの共有は、このように非常に楽に行うことができるのです。
しかし、統一されていることはそこまでのルールでしかなく、実は悩ましいことに、同じ番号でもメーカーによって、あるいは国によって、その形状は異なります。
要するに、細かく規格化されているわけではないのです。
具体的に、Hirsch Carving Toolのラインナップを見てみましょう。こんな感じになります。
Henry-Taylerではインチ表示でしたが、Hirschではmm単位ですね。こういうところが違います。
実際、統一されていないということは、気をつけなくてはならない部分ではありますが、実は実作業上は大した問題ではありません。
例えば、1番は「平鑿(ヒラノミ)」に相当すると言いました。
しかし、日本で「平鑿(ヒラノミ)」と言った場合、ほぼ確実に「片刃(片側だけにシノギ面がある刃の仕込み方)」のノミですが、カービングツールの場合はそうはいきません。
メーカーにより「片刃」の場合があったり、「両刃(刃の表面と裏面両方にシノギが存在する刃の仕込み方)」のツールであったりします。
私はカービングツールにおける1番は、要するに刃が湾曲していなくて、平なものなら何でも1番と表現しているものだろうと考えています。
ヘンリーテイラーの#1番は両刃です。
Hirschの#1は方刃ですね。
また、1番という呼び名はせずチゼル(Chisel/ノミ)という呼び名が使われることもあります。
このような混沌とした状況の中、ノービスの木彫入門者にとって、どのようなツールを選べばいいかということは、本当は悩ましい問題です。
6本のツールと鑿巻き、およびセイヤーズの教則本付です。
教則本はノービスの人には参考になると思います。
しかし心配は要りません。
実は平均的な仕事の範囲内においては、必要とするツールは、比較的限定された数で事足りてしまうのです。
プロのクラフトマンの場合、80種類位のカービングツールを所有していると言われていますが、本当は、2,3ダースのツールがあれば、毎日の仕事に十分であるといわれています。
その他のツールは、特別な目的のために使います。
それらのツールは、非常に必要とされているツールなのですが、実は、日々の仕事に使われることは稀なのです。
さて、一般論として、ツールは以下の3つの系統で区別(分類)することができます。
1.サイズ
ツールにより様々なものがあります。
Hirsh Carving Tools -Woodworking
Hirschはドイツの最も古いツール製造会社の1社です。Hirschのツールはプロフェッショナル品質のツールで、伝統的にヨーロッパの彫刻業者が好むスタイルです。漆塗りのボックスウッドハンドルは、優れた耐衝撃性を有し、その八角形は、安全なグリップを与え、ベンチで転がりを防ぎます。完全に磨かれた刃は高炭素鋼から鍛造され、耐久性のためにRc61に堅くされ、最終的なストロッピングだけで使用することができます。
これらのツールは、通常のメンテナンスで一生使い続けることができます。
7つのツールのリリーフ彫刻セットには、
- 10mmスキューチゼル、
- 6mm60°パーティングツール
- 12mmと20mm#3ストレートガウジ
- 12mm#5、6mm#7
- ストレートガウジ12mm#9ストレート
が含まれています。
2.形
カーブしたものや、ストレートなどガウジの形
初心者向けの彫刻セットが欲しいと頻繁に依頼されますが、これらは、そのような要求に会うよう、多くの彫刻師と相談して開発されました。
7つのリリーフ彫刻ツールのセットには、3/8インチのスキューチゼルが含まれています。1/4インチ60°パーティングツール。3/8″と5/8″#3ガウジ;そして1/2″#5、3/8″#7、そして1/2″#9ガウジです。
非常に優れた入門彫刻セットです。。それぞれに9ポケットキャンバスツールロールが含まれています。
工具は完全に磨かれ、すぐ使い(すぐに使うことができる)と説明にはありますが、やはり研がないと使えません。
3.セクション
刃の形、カーブド、フラット、Vシェイプなどのことを指します。
Sculpting Tools by Henry Taylor – WoodWorking
- A.1-1/4″ Straight Chisel
- B.1″#11 Straight Gouge
- C.2″#3 Shallow Gouge
- D.3/4″60°Straignt Parting Tool
さらに細かく、スペード、ロングスペード、(スペードは刃の根本が狭く、刃先が広くなっているツール)、ショルダー(刃のキワがあるもの)、ショルダーのないものといった区分けができます。
すべての仕事に使うことが可能な万能ツールは、ストレートツールです。
多くは、頑丈に作られ、それゆえ、マレットなどの強打に耐えることができます。
和鑿において見られる”金輪”に相当する金具が付いているツールと、無いツールがあります。機能はグリップの強度補強ですので、大きな力をかける大きめのツールついている傾向が高いようです。
おそらく、グリップと歯は交換可能であるという設計思想から、グリップに対して、卓越した強度は求めていないからでしょう。
ストレートツールはボスチング(荒削り)、あるいはセットインと言った作業に使います。また、同時に、すべてのカービングタイプでも使用されています。
しかし、切削深度が軽度の場合には、よりデリケートなスペードツールを使います。スペードツールは最後のモデリングや特別な加工時により効果的に使用されます。