ウッドカービング教室[第72回]-ナイフを使ったチップカービング-

カービングナイフでどう掘るのか?

練習風景

 ナイフを使ったチップカービングについて、ご質問をいただいたので、少し補足説明が必要のようです。この項では、少し戻って、カービングナイフを使ったチップカービングのポイントを簡単にまとめたいと思います。

 ひつまず作業を進めるうえで、気を付けるポイントはナイフの使い方になります。

 カービングナイフで木を削る時、本当に大きくわけると2つのアプローチがある感じです。1つは①ナイフを刃に対して、直角に押して切る場合で、もうひとつは②スライスして切る場合です。便宜上①を押し切り、②をスライス切りと呼ぶことにし、図で書くと次のような感じです。

①、②押しきりとスライス切り

 まず、①の押して切る場合ですが、これは、比較的平面を作りやすい切り方です。

 実際は刃の方向に直角に押すわけではなく、スライスさせながら動かくので、ちょっと違うのですが、ここで細かいことをいうとややこしくなるので、ひとまずここでは、押して切る感じという説明にしましょう。③に押し切りで平面を作る際の感じを図にしましたが、こんな感じでナイフは材に対して、ある一定角度をキープして、そのまま刃を進めます。

③押して切って平面をつくるの図

 ナイフで平面をつくるときのポイントはこの「一定角度」をいかにキープさせるかということにあります。

 一定角度をキープするということは、チップカービングを行う場合、割と重要な考え方で、掘られた傾斜面をざっと見たとき、すべての造形が同じ角度でできていると、基本的にはきれいに見えるはずと。

 掘る角度が一定なら、三角形が大きい場合は深いへこみに、小さい場合は浅いへこみなります。これは当然のことのように思えます。(これも、ちょっとわかりやすいように説明を簡略化しています)

 チゼル(平ノミ)で平面を作る場合、しのぎ面の裏側の面を定規面というのですが、その面を平面を出したい面にあてれば、ナイフより簡単に平面を出すことができます。④の図

④チゼルで平面をつくる

 自分が思うに、これが多くのクラフトマンがチゼルを使って作業を行いたい理由だと思います。

 戻って、キワを作る際、そこはスライスしながら切る形になります。

 ですから、一つの切込みを作るとき、ナイフは最初は押して入れて、最後はスライスして抜けるように意識して使うと、良い結果が得られると思います(⑤図)

⑤ナイフの刃の動き

 絵は刃の進む方向に対して、スナップをかけた回転方向の動きが見えます。なめらかに、オーガニックにナイフを進めてください。注意するポイントとしてあげるなら、スライス切を行う箇所では、基本的に面は出せないということです。面を出せないというのは木工用語で、要するに平にできないという意味です。

 なので、力の入れ具合を調整して、キワの部分だけ、際立って深くなるような形にならないよう、気を付けましょう。(⑥図は推奨できない感じの例です)

⑥キワが極端に落ち込んでしまったの図

 ⑥の図は三角形の辺の真ん中が「太鼓腹」のように盛り上がっている感じになります。(そういう絵にしたつもり)