ウッドカービング教室[第9回]-パンチ-

 パンチとは先端部にギザギザの文様が施された金属製のスティックのことです。

Punches-Lead-780×415

作品にテキスチャを入れるシンプルなツールをパンチ(Punch)といいます。

 木工パンチと呼ばれるものは、テキスチャが先端部に施された金属製の棒です。

 このパンチがいつ頃から使われるようになったのかは、定かではありません。

 しかし、カービング作品の背景にパンチされた例は、約1000年以上前の作品から見ることができます。

 共通のデザインはドットで構成されており、それらが連なったり、アスタリスク型に構成されたり、十字に並べられたりしています。

 文字やハート、木の実、錨(イカリ)、星、三日月などの紋様を見つけることもあります。

 使い方は、パンチを直角に木材の表面にあてて、ハンマーで叩くという、至ってシンプルなオペレーションです。

 テキスチャにコントラスト効果を施す以外に、パンチを使うには別の理由もあります。

 そのひとつが、背景の荒さを隠すということです。

 特にレリーフカービングの場合、木の種類によっては木目の切り替わり部分で逆目が出てきたりまします。そういった箇所の「荒さ」を隠すために使ったり、木口にできた、取り除くことが難しい小さな木の裂け目などを隠すためにプロは使用したりします。

パンチされたバックグラウンド

パンチで凸面を出す方法

 木に、凹み面ではなく凸面を出すために、パンチを使うときもあります。アイパンチ(eye punch)は丸や卵型の凸形状を作るために、背景に圧縮を加えるツールです。

eye punch pattern

ひとつの便利なパンチの使い方として、凸形状をパンチで作る方法があります。このテクニックは木の表面にカエルのコブを作るのに最適の方法です。

 お店で買える道具を使い、次の簡単な手順でできますので、一度試してみることをお勧めいたします。

  1. スクラップのシナの木と釘を探します。
  2. 釘の頭をスクラップの表面に軽く打ち付けます。
  3. パンチマークが消えるまでサンディングします。
  4. 沸騰した水を数滴圧縮したエリアに落とし、凸が現れるのを待ちます。

 木の細胞が圧縮によって壊されたとき、それらは湿ったときにふくれる性質があるのです。この技術は家具の修復師が凹んだ部分を取り除くときに使うテクニックです。

5PC BACKGROUND PUNCH SET

パンチには大きく2つの種類があります。
 ひとつは、バックグラウンドにテクスチャーを作るためのものであり、もうひとつは奥まった、やっかいなパーツの面出し(レベリング)に使う、特別な目的のためのツールです。

 後者の例は、アカンサスリーフの小さな目のカット用のもので、卵型の形をしています。

アカンサスリーフの例

下側のクルクル回っているように見える葉の中心部が、ここで言っている”目”になります。

パンチの形

この目のパンチに使われるのはAのパンチです。

 アイパンチ(eye punch)と呼ばれるこれらのパンチは彫刻時”目”を同じ場所に同じサイズで作るために使います。2つの”目”を同じサイズで作るのにはとても便利です。丸形と楕円形があります。

 アストラガル(Astragal)モデリングの制作。アストラガルとは2つの平らな線と、1つの半円形の形状をした造形のことで、柱の上部、家具、木工品のフレーミングデバイスとして使用されている造形です。イメージが沸きにくいので以下に例を示します。2つの平らな面と半円形の形状で構成された造形であれば、丸い造形でも平らな造形でも、同じようにアストラガルと呼ばれるようです。下図のような柱の装飾に使われたり、鏡やガラスの枠や補強材に使われたりします。

このようなアストラガル造形を作る際にもパンチは使われます。

 たとえば、ベリーの間の空間を鋭利に見せるための造形です。丸を2つ接して書いて、2つの丸に接する直線を1本引くと、その3者で囲まれた部分は三角形になります。そこをパンチングするのです。このときのパンチの形状は上の図のBのものです。ちなみに、ベリーとはビーズのことで、くだもののブルーベリーのベリーのことです。

 パンチを使用するとき、時折、丸い小さな凹みが必要になりますが、そういうときは丸型のパンチを使います。一般的なパンチの先端は、平らになっているか丸くなっており、日つゆおとする効果により選択します。

 パンチは、ガウジなどの彫刻刀で表面の”面が出された”あと(すなわち、仕上げ面の切削が完全に終わったあと)、切削表面を鋭利に見せるためだけに使うべきです。パンチだけを使って彫刻を進めようと考えてはいけません。パンチによる効果は木を傷めますし、仕事のキビキビ感をそいでしまいます。

 デコラティブなパンチ・パターンは、ドット、丸、十字模様など多種多様なものがありますが、なかにはFrosting punch(艶消しパンチ)と認識されているものもあります。

なかでもシンプルなドットは一番一般的なものです。

 パンチされたバックグランドが全体で異なった外観や、テクスチャーを表現したいような場合、あるいはパターンを強調したいような、いくつかのデザインに対しては、バックグランドのパンチは非常に効果的です。

 しかし、バックグランドの雑な仕上がりを単に隠すためだけには、絶対に用いるべきではありません。

Leaf punching

何十通りもの異なった形状のパンチが市販されています。

 しかし、もし自分が欲しいパターンの凸、あるいは凹面を見つけることができなかったら、自分でツールを作ることを考えてみましょう。

 頭の大きさが、16ペニーサイズくらいの釘が見つかれば、自分が必要とするデザインを、やすり、または回転式の電動工具ビットで削り込むことができます。

16-penny nail

釘が見つからない場合、代替えとして考えられる材料はDIYショップなどで手に入る”Steal mending plate”です。典型的なサイズは3″×5/8″厚さ3/32″程度のものです。”Steal mending plate”とは2つの木を接合したり、接合部を補強したりする治具です。ハンマーで叩いたり、やすりでデザインを彫り込むのに十分な堅さがあります。

Steal mending plate 3″ x 5/8″

丸いパンチは銅の棒から作ります。

 しかし、どのような効果を得たいかにもよりますが、外側、あるいは内側に傾斜(テーパー)をつける必要があります。

 鳥の目などを掘るパンチの場合は、外側に傾斜がある一方、内側にも傾斜が必要です。棒をドリルプレスにセットして、小さな内側加工用のリーマーを低速で回転させて切削します。

 外側の傾斜を製作するには、回転軸の外側からダイヤモンド砥石を当てて切削します。

 楕円形にしたい場合は、丸い形状を作ってからペンチでやさしく整形します。

 すべての彫刻にテクスチャが必要というわけではありません。多くはナイフや他のハンドツールで実現することが可能です。

 しかし、形状が斬新な場合や、次のあなたの作品のために、特別なコントラストをつけたい場合、挑戦してみる価値はあります。