セッティングイン1
ほとんどすべてのデザインにおいて、製作のある種の段階では、セッティングイン(Setting-in)を行います。
この過程では、アウトラインはガウジとチゼルで、その加工箇所のカーブにおよそ会うようなツールを選んでカットされます。
やわらかい木では、ツールはクサビによる圧力を受けるので、なんら難しいことはありません。
必要なことは、取り除く側の木に、わずかに切り込みを入れることだけです。
そうしないと、クサビを打ち込む動作(要するにセットイン動作)によりツールが線からそれる方向に、木からの圧力を受けてしまうからです。
下図にセットインの例を示します。
この例では、中央の彫刻が浮き上がり、バックグランドが取り除かれます。
チゼルによるカットで彫刻の周りをおおまかに彫ります。
このとき、細部の加工は無視します。
ディテール(細部の装飾彫刻)は、ディテールの彫刻ができる程度の十分な塊を残して、取り除きます。
そして最後に比較的大きな半円形のガウジで周りの余分な木を取り除きます。
堅い木をこの方法で彫刻する場合、しばしば、実行できない状態に陥ります。
なぜなら、ツールを木にエントリーする際に発生する抵抗が大き過ぎるからです。
どんなことが起きるか想像してみましょう。
ガウジの刃先の肉厚は、おおよそ3mm程度です。
仮に、bevelの全域に渡り、木に差し込む(エントリーする)としましょう。
そのとき、木はその厚さ分(歯の厚さ分)だけ”どかなければなりません。”
(表現が変ですが)
通常、堅い木でこのアクションはできません。
あるいは、試したところで、ツールの刃先のこぼれ(刃先が破損すること)につながるだけです。
この種の仕事を行う場合の唯一の方法は、デザインの外側の取り除く側を、U-ツールを使ってあらかじめ取り除く方法です。
U-ツールが半円形のガウジより便利である理由は、木の表面からガウジが下側に入って場合(深く掘った場合)表面エッジの処理をしなくてすむため、半円形のガウジより深く掘ることができるからです。
この作業の目的は、取り除く側の木をセットインをする前に取り除いて、”なくしておく”ということです。
すると、取り除く側の木は薄く小さくなり、セットイン時の抵抗は非常に軽減されるのです。