今までの私たちのレタリングに関する関心と練習は、凹加工の文字(incised letter)でした。
これらは、おそらく木によるレタリング彫刻の中で、最も使用されているものですので、これらから練習を始めるというのは最良の選択であると思われます。
さらに加えるに、レイズドレタリング(凸文字のレタリング”Raised lettering”)という手法があり、今回はその方法に関する話題です。
この手法は簡単にいうと、incisedとは逆に、文字をグラウンドレベルから浮き出させる手法です。日本の木工用語でいうところの浮き彫りに相当します。
レイズドレタリングは最終的にその彫刻が占める場所や、コストなどに、今まで述べてきた表面彫刻には見られないような依存関係があります。
つまり、文字の周りの木は、必要とされる深さや、グランドレベルまで、完全に取り除かなければならないので、かなりの長い時間とコストがかかるのです。
しかし、特に光の状態が悪いとこころに飾る場合など、V溝でできている彫刻に比べて、レタリングから受ける印象は比較的強く、効果的で、そのような場所に飾るのには適した加工であるといえます。
事実、これらは彫刻されたパネル上の”浮き彫り”として認知されるようになっていますが、これは、グランディング(グランドを作る作業)の練習を終了した人にとって、なんら難しい加工ではないことは明白です。
文字は、これはV溝加工に見られないことですが、技巧的な理由から、一般的に”強い”形のものが多くなります。
※強いとはfontのウェイトが大きいという意味で、ボールド(太文字)という意味です。
なぜならば、この加工では木目がどのような方向に走っていても、適応させる必要があるからです。
一般的な断面図を以下に示します。
サイドを垂直に加工してはいけません。
また、アンダーカット(垂直よりも、切り込みが文字側に食い込む加工)はもっと悪い形です。
セリフは一般的に言って小さく、先のとがったものではありません。
外形をセットインするときは、注意が必要です。
作業をするとき、曲がったセクションのセットインには、特に注意してください。
なぜなら、こういうパートは数種類の曲線が重なったパート(またあるパートでは、曲線と曲線が切り替わるところ)であることが多いからです。
外形(サイド)を加工するのに、適したツールを持っていることを確認してください。
持っていない場合は、作業を開始するべきではありません。
間違ったツールで正しい形につくろうとする”即興的な作業”は、例外なく目も当てられない事態につながり、簡単には直せない大きな失敗につながります。
薄いスペードチゼルと、内側も外側もよく砥いだガウジがベストな組み合わせです。