ホールダウン
クランプは、彫刻作業中作業対象を保持する目的で使用されます。 Holdfastはホールダウン(Holddown)とも呼ばれ、作業台の穴を貫通する茎部分と足部分(shoe)で構成され、Shoeの下に当て木を挟んで作業対象を固定します。
写真を見る限り、円柱の棒を穴にさしているだけなのに、なぜ固定できているか不思議に思うかも知れません。
しかし、これで固定できています。
このHoldfastは、Gクランプを使って作業対象を固定しようとしても、Gクランプのフトコロの制約でそれが届かないとき、固定する箇所が机の端から届かない場合などに特に便利です。
写真にはベンチ(作業台)に差し込んでいる”茎”の部分にタップが切られていることがわかります。
しかし、ベンチに開いている穴にタップが切られているわけではありません。
また、ベンチの裏側からナットで締め付けて固定しているわけでもありません。
ベンチの穴はバカ穴の構造になっています。
”茎”の部分に切られたタップは直接使用しなくてもテコの原理が働き、締め付け用のハンドルを回すだけで、材料を固定することが可能となります。非常に簡単に材料を固定化することができるのです。
このクランプで特に強いクランプ力を得ることができる理由は2つあります。 1つ目の理由は作業台の穴に対して、垂直に材をクランプすることができるということです。
CクランプやGクランプで作業対象をクランプしようとすると、クランプ面が回転するので、材をスライドする方向に力が加わってしまいます。しかし、ホールダウンクランプではそういう力は働きません。
ちなみに、CクランプやGクランプはフレームの形からそう呼ばれており、両者に明確な区別はありません。
そして、そのどちらも昔は”Carriage makers clamp”、すなわちキャリッジ(車や馬車につけるキャリッジのこと)制作者のクランプや、”Carriage Clamp”(キャリッジクランプ)と呼ばれていました。
2つ目の理由は湾曲したアームを用いていることから、テコの原理で材が上側に戻るのを押さえつけているということです。
CクランプやGクランプはテコの原理を応用していません。
CクランプやGクランプのクランプ面はスクリューになっており、締め上げて固定します。
CクランプやGクランプを使用して作業対象を作業対象に取り付ける際、時折やっかいなことが起きることがあります。
そういう場合はベンチスタッドを使うこともできます。
フロント側にクランプするスペースが十分に無い場合、ベンチスタッドは有力な固定方法の候補となります。
ベンチスタッドは木がスクリューで固定するのに十分厚く、後ろや底にできる穴が問題にならない場合に有効な固定方法です。
Dog Clamp
木が薄すぎる場合はdogsを使い作業台に固定します。 dogsもテコの原理で材を固定するもので、写真のような治具をホールダウンの茎部に通し固定します。 写真のような鍵型に曲がった鉄製の治具です。 真ん中の穴にホ-ルダウンの茎(Stem)を通して固定します。
固定に必要なクランプの数は?
さてクイズを出します。 材をクランプするとき、クランプは最低何台必要でしょうか?
この問題に数学的に答えると次の通りです。
1点を通る直線は無数に引けます。
一方、2点を通る直線は1本しか引けません。つまり、普通の作業台の”面上”で作業をする限りにおいて、材を固定するクランプは最低2つ使わなければならないということです。
たとえば、トリマーでR加工されたエッジに、ツキ板を貼る作業をすると仮定します。
この場合、クランプは何個いるでしょうか?
この問題の場合、ツキ板を貼った上からクランプで押さえるのですが、理論上3つのクランプを必要とします。
数学的に説明すると、2点を通る”面”は無限にありますが、3点を通る面は1つしかないと、証明できるからです。
面を空間内に一意に固定したい場合、その場合、クランプは3つ必要になるわけです。
さらにいうと、4個クランプした場合、4点がひとつの面にあるという保証はどこにもありません。
したがって、3点でクランプするより、不安定になり、失敗の原因になります。
最後は”木工ことわざ”はお教えいたします。
「クラフトマンは作業を行うために、いくつのクランプを用意すればいいでしょうか?」
答え
「クランプできると思われる数+1」
常に、1つ余分がある程度がちょうどいいということです。
Vice
Viceとは万力のことです。一般には木製の万力と金属製の万力がありますが、特にSwivelling type(スエブルタイプ.ジョーが360°回転できるタイプ)の場合、木製万力より、金属製万力の方が使い勝手が良くなります。
ジョーのクランプ面に関しては、作業物に対し、キズをつけないようフェルトを巻きましょう。